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「良い」ということ。
「文句なしにいい作品というのは、そこに表現されている心の動きや人間関係と言うのが、俺だけにしか分からない、と読者に思わせる作品です。(中略)一人一人は『俺だけ』という感じに思うのですが、そういう人がたくさんいる。そういう作品を書く人が、時代が経ってもなかなか滅びない作家と言えます。」(吉本隆明『真贋』65-67頁)

私が影響を受けた作家、というと大げさだけれど、そこから得られるものはすべて得ようと思って読める書き手というのはそう多くはなくて、そのなかの動かしがたい一人が村上春樹、だったりする。

でも私は、村上春樹がなぜここまで「売れる」のかが、さっぱり理解できなかった。

彼の作品のなかでも私にとって特別な作品は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』なのだけれど、私はこの作品に出逢ったとき、ただ理解できたのは、「ここにはとても大事なことが書いてある」という、そのことだけだった。

いま思うと少し恥ずかしいけれど、教科書を読むように付箋を貼りながら、繰り返し繰り返し読んだ。

でもそれは、あくまでも私にとって大切なもの、なのだ。
そのときの私が抱えていたものは、どう考えてもとても個人的なもので、でもこの作品は、その私にしか理解できない場所にあるそれをぐらぐらと揺らした。

その個人的な何かがまさか、これほどたくさんのひとびとが熱狂するほどの汎用性を持っているとは、とても思えなくて、皆がこの作品のどこに惹かれて読んでいるのかということが、本当に不思議で仕方がなかった。

そのとき村上さんを教えてくれた人も、「軽く読み流すこともできるし、おしゃれに読むこともできるから、まあ、とにかく読んでみてよ」と言っていたのだけれど(そして私はその人のことがとても好きだったのだけれど)、これのどこがどう軽くておしゃれにも読めるんだ、とひとりごちながら読んだのを覚えている。

そんなとき、吉本隆明の『真贋』を読んだらまさしくその回答が書かれていて、なるほどそういうわけかと、ただただ、びっくりしたのだった。

それからというもの、冒頭の吉本さんの言葉が、私にとっての作品の良し悪しをはかるスケールになっている。

えっと、これって私にしかわからないんじゃ…?

「そういう人がたくさんいる」かどうかは、ひとまずのところはどうでもよい。
そう思えた作品が、私にとっては「良い」ものなのだ。

このひとは、どうして私のことがこんなにわかるんだろう。

文字にすると痛いひとだなあ!完全に。
でも読んでいるときは、観ているときは、本気でそう思っている。
単なる勘違いにすぎないかもしれない。
その確率が高い。
けれど、そう思わせてくれたひとは、そういう作品は、私にとって大切な、価値のあるものなのだ。

それは文学に限らず、音楽や映画、エッセイ、ドラマ、なんでもよいし、もしかしたら俳優だったりミュージシャンだったり、そういうひとたちの存在自体が「作品」と呼べるのかもしれなくて、だとしたら「作品」と呼べるものすべての判断基準はそこにある、と思っている。

最近早川義夫の『生きがいは愛しあうことだけ』を読んでいて、そのことをふと思い出したので、書きとめておきたいと思ったのでした。

(2014.11.1追記)
吉本 隆明
講談社インターナショナル
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(2007-04-01)

| どくしょ | 23:44 | comments(0) | trackbacks(0)
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